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この市街地は1952年に鳥取大火が起こり街中が焼けた。
復興の際、同年に施行された耐火建築物促進法の最初の適法として、附近にある目抜き通りの両側に防火建築帯が建造された。コンクリート工事の実例がほぼ皆無であった当時の鳥取において復興を早める意図があったのであろう、防火建築帯を参照したと思われる、ほぼ同じ規格の鉄筋コンクリート造の家屋が同時期に建てられ、未だにそのいくつかが現存している。今回の敷地もそのうちの一つである。
躯体の1階の天井高さはアーケードと同じ3,500mm、2階は3,400mm、柱スパン含め、防火建築帯とほぼ同じ規格であり、またそれは一般的なマンションの躯体天井高さと比べて遥かに高い。
この空間スケールはアーケードと同じく、大火以降から世代を超えて経験されてきたこの街特有のスケールであり、大きな公共建築などがない頃から、地域の共同体の活動を支えて来たであろうことは容易に想像ができる。これらを積極的に評価し設計に取り組んだ。
この場所を訪れ手に取った本について、家族や友人と話し、それがまた知人や街の人へと小さく小さく伝搬していく。まちづくりを声高に叫ぶよりも、街が小さく変わっていくことを支持したい。この小さな図書館にはそんなことを期待している。
小さな図書館のある家 / 2020 / 鳥取県 / 併用住宅 / 改修 / 鉄筋コンクリート造
小さな図書館のある家。
たくさんの本をお持ちでその収蔵場所も兼ねた住まいを考えていた施主に、単に書庫としてだけでなく、気が向いたら私設の図書館のようにして街に開くことができる住空間としてはどうかと提案し計画が始まった。
入り口にあった6枚のガラス戸はそのまま転用することとし、一階はアーケードから続く土間や客間として、あるいは小さな図書館のような開かれた場所にもなり、円環状に設けられたベンチはその様々な場面で使われる。上階は躯体が持つおおらかさを存分に活かして施主の好みでもあるワンルームとした。設備を最新の高効率機器に取り替えた以外は、建築全体として大きな費用は掛けず最小限の改修に留めた。
東京と鳥取の2拠点でカフェやギャラリーを運営する施主は、東京でのマンション暮らしを好まなかった。天井は高い方がいいし、住空間も広く使える方がよかった。本の収蔵も含めて既存躯体をそのまま利活用することはそのニーズを叶えるのに最適であった。また、友人にアーティストや音楽家も多く、彼らの活動を鳥取で紹介するのに1階がギャラリーのような場所であることも好まれた。彼らの築いてきた財産によってこの場所が様々に変容するといい。
キノシタヒロシ建築設計事務所│Hiroshi Kinoshita and Associates
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インターン実績│広島工業大学,近畿大学,鳥取短期大学,米子高専,ほか(場合によりリモート対応可)
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